私たちは、起きている間に、「アデノシン」という化学物質が脳内に蓄積されていくことが、最近の研究で分かってきました。
体内のアデノシンが増えてくると自然と眠気を感じ、さらにアデノシンの量が増えていくと眠りたい欲求に強く駆られるようになります。この現象が「睡眠圧(眠くなる圧)」と呼ばれるものです。
脳内に蓄積された睡眠圧(多量のアデノシン)は、大人の場合、8時間ほど眠れば一掃されますが、体内に残っていると、日中でも「何だか眠い」という感覚が続いてしまいます。
この起きている間に、アデノシンが脳内に蓄積されて、眠くなる生理現象は、「スニップスのリン酸化」と呼ばれています。
アデノシンとは
アデノシンは、細胞内に蓄えられたATP(アデノシン三リン酸)が、エネルギーとして燃焼した際に、余剰産物として細胞外に放出される代謝分子です。
アデノシンの量が増え過ぎると、体内はATPを多く消費した状態となるため、その情報(シグナル)がフィールドバックされ、ATPを蓄える状態、つまり睡眠状態を促します。
アデノシンとカフェインの豆知識
なぜ、寝る前にコーヒーを飲むと、眠れなくなるのか?
カフェインは、コーヒー、紅茶、エナジードリンク(カフェイン量大)、コーラなどに含まれる刺激性物質です。
カフェインは、アデノシンが受容体に結合するのをブロックすることで、アデノシンの入眠効果を阻害します。カフェインを取ると、一時的に目が冴えるのは、その為です。
しかし、カフェインの効果が切れると、抑制されていたアデノシンが受容体に結合し、急に強い眠気が襲ってくることがあり、これをカフェインクラッシュと呼びます。
頻繁にカフェインを摂取すると、体はより多くのアデノシン受容体を生成し、カフェインの効果を減少させる耐性が生じることがあります。
眠気に対抗するために、カフェインの摂取量が増えてしまうのは、この為です。
運動と睡眠の関係
なぜ睡眠には運動が良いか?
前述のように、人は体内にアデノシンが増えるほど、睡眠が誘発されます。
よく眠れるようになるには。アデノシンを増やすには、酸素とATPを使ってエネルギーを消費する必要があります。人体の中で、最もATPを消費するのは、骨格筋です。
つまり、適度な運動(有酸素運動)によって、睡眠誘発物質(アデノシン)が生産され、良質で深い眠りが得られます。
一方、不眠症に悩む現代人の多くは運動習慣が不足しがちです。一日中、座りっぱなしや、同じ姿勢でパソコンや事務作業を強いられることで、体幹骨格筋系のエネルギー代謝が不足して、十分なアデノシンが生成されない場合は、睡眠の質が低下します。
さらに、多量の情報処理のため、目と脳だけを酷使するアンバランスなエネルギー消費を強いられます。
趣味や気晴らしが、身体を動かすことではなく、動画視聴なゲームだとなおさら目と脳に負担です。
身体は疲れいないのに、目や脳が上手く働かない。最近では、このようや状態を「脳疲労」といいます。
脳疲労(のうひろう)とは、精神的なストレスや長時間の知的作業、勉強などの集中力の持続などによって脳が疲弊した状態を指します。これは物理的な疲労とは異なり、主に認知機能や感情、意思決定能力に影響を及ぼします。