1回の睡眠サイクルは90分程です。入眠時は、まもなくして、約60分のノンレム睡眠(ステージ1,2,3)に移行します。その後、30分のレム睡眠が起こり、再びノンレム睡眠に移行します。この90分のクールを、1回の睡眠中に4回~6回繰り返します。朝に向かって、徐々にレム睡眠の割合が大きくなり、より覚醒しやすい状態になります。これには、副腎皮質から分泌されるコルチゾール(交感神経を鼓舞)が朝方から増加してくる睡眠の生理現象が関与しています。これは、目覚ましホルモンとも呼ばれます。

■ノンレム睡眠の3レベル

ノンレム睡眠は、眠りの深さによってステージ1~3に分類されます。ステージ3(デルタ波領域)は、最も深い眠りの状態で、最も脳が休息を取れる時間です。睡眠ステージ3では、組織の修復、免疫系の整備、身体の成長が助長されます。後述する成長ホルモンが多く分泌されるのも睡眠ステージ3です。

Lv1,浅い眠り 入眠前のアルファ波(覚醒閉眼時)が消失、振れ幅の小さい脳波

Lv2.中間眠り 紡錘波(12ヘルツ~14ヘルツで1秒程度続く)

Lv3,深い眠り(2回目以降は割合が少なくなる)デルタ波  (1~4ヘルツ前後の脳波)

■ノンレム睡眠中の脳の動き

脳の神経細胞同士の不要な繋がり(ニューロン・ネットワーク)が解除され、記憶の再構築と強化が行われます。体温、血圧、心拍数は低下し、筋緊張は緩やかな状態となります。起きているときに酷使される左側頭葉(言語中枢)や左前頭葉の活動が特に低下します。成長ホルモンの分泌が増加します。

■レム睡眠中の脳の働き

身体は休んでいるけれど、脳は部分的に働いてる状態です。覚醒の状態に近く、目が覚めやすい浅い眠りの状態と言えます。レム睡眠中は、高速眼球運動(睡眠中に眼球が小刻みに動く)が起こります。理性をコントロールする前頭前野の活動が低下、視覚連合野、感情系統の扁桃体が活発化、大脳辺縁系の海馬が活動し記憶の整理が行われます。体温、血圧、心拍数は上昇傾向となり、筋緊張は著しく低下した状態です。

2018年8月25日、筑波大学からレム睡眠に関する大変興味深い研究結果がプレスリリースされました。

レム睡眠中に大脳皮質の毛細血管血流量が増大し、脳細胞の代謝が活発に行われているという事がマウスの実験から明らかになりました。このレム睡眠中の大脳皮質血流増加作用は、覚醒中やノンレム睡眠時と比べて、大幅に上昇しているということでした。

これまで、レム睡眠の役割は謎に包まれている部分が多かったのですが、脳血流増進により、脳細胞に酸素と栄養を運び、老廃物を回収するという脳細胞の代謝に大きく関与している可能性が示唆されました。