目は、なぜ動くのか?
凄く漠然としたテーマで申し訳ありません。この問いに関しては、人の網膜は中心部分に光を収束させないと物がハッキリ見えない、という切り口で話を進めていきたいと思います。

まず、皆さんは、画素数(ドット数)という言葉をご存じだと思います。スマホやデジタルカメラを選ぶとき、どれだけ写真がきれいに映るか、それを示す数値が画素数です。

私たちの見るものは、すべて「光の点」の集合です。画素数とは一枚の写真の中に、どれだけ光の点を多く含められるかを表します。

昔のゲームやテレビは、ずいぶん画質が荒かったですね。それを思えば、今の映像は、如何に画素数が高いかがわかります。

最新の一眼レフで2500万画素、アイフォンで1200万画素となっています。それでは、人間の目は、どれぐらいの画素数を誇るのでしょうか。

人間の目は、中心部の画素数が最も高く、周辺ほど画素数は低くなる、という特徴があります。中心部(黄斑部)の画素数は700万画像ぐらいと言わています。

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網膜の中心部(視線方向)が一番よく見える。そのため、物を見るということは、目や頭や身体を動かして、さらに目も動かして、網膜の中心を対象物に合わせる必要があるのです。

尚、黄斑変性症、網膜症、緑内障などで、視野の中心部分が見えにくい人は、目を必要以上に動かさなければならないので、非常に目が疲れます。

まとめ

私たちの目は広い視界を持っています。両眼で200度以上です。しかし、実施に物をシャープに認識できるのは中心部分のみ。人間の網膜の識別感度は、中心部分が最も高く、周辺に行くにつれて悪くなります。眼球運動は、外界から得られる視覚情報を、効率よく脳に入力するための仕組みという事です。

次に、眼球運動について、基本的な人間の目の動き、輻輳・散放(むき・よせ)、両眼視、融像、立体視の仕組みについて詳しく解説します。

衝動性眼球運動とは

脳科学の世界では、サッケードと呼ばれています。私たちの目は、視界の中の物体を見るときに、ピュン・ピュンと、アメンボが水面を移動する時のように、非常に素早い動きをしています。生活上、多くの場面では、私たちの目は、このパターンの繰り返し。

また、物体を固視している時も、眼球はごく僅かに振動しており、静止してる状態にはありません。実験で眼球の動きを完全に止めてしまうと映像が消えてしまうとも言われています。眼球は微細動することで、途切れることなく網膜の画像が脳に認識されています。

滑動性眼球運動(パッシュート)

こちらは、ゆっくり動いている物を目で追いかける時に生じる、滑らかな眼球運動で、追従性眼球運動とも呼ばれます。

ちなみに、文章を読む時は、どのような眼球運動が行われているのでしょうか。それは、パッシュートではなく、サッケードです。

通常、文章を読む際は、目を滑らかに動かすとのではなく、ブロック単位で情報をインプットして、さっと目線を次に移動させ停止して、次々と目を動かしてきます。このブロックの単位が大きいほど、文書を読むのが早くなります。

眼精疲労があると、どうでしょうか。目の動きが悪くなると、脳の情報処理能力も低下してしまいます。

動体視力とは

スポーツ選手などが運動において求めらる感覚は、視覚、聴覚、触覚、平衡感覚などですが、その中でも、目から得られる視覚情報が重要性を締めます。動体視力とは、眼球反応速度のことです。プロスポーツ選手は競技の中で、素早く対象物を目視し、正確な視覚情報を脳にインプットして、瞬時に身体運動にアウトプットすることが求められます。サッケードとパッシュートの連動性、反応速度に加えて、これから起こることを予測する予知能力、一瞬のひらめき、など、それらが相まって、並外れた記録を樹立できるのです。

熟練者の眼球反応速度は700°/秒と一般の人の1.5倍はあるとされます。これはビジョントレーニングなどの分野ですが。

両目が逆方向をむく「よせ運動」(非対称性)
次は「寄り目」と「離れ目」の話です。眼球運動で重要なのが、この「輻輳」と「開散」です。特に輻輳機能は、両眼視機能、立体視機能へとつながっていきます。

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近くの物を見ようとすると、目は寄り目(よせ運動)になります。これは、輻輳(ふくそう)眼球運動。

また、遠くの物を見ようとすると、目は離れていきます。これは開散(かいさん)眼球運動。

輻輳順応について

人が近くの物を見る時、両方の眼球は鼻側に寄っていき、視線は物体上で交差します。見る物が近いほど、寄り目は強くなります。

輻輳は両方の目で、一つの対象物を見る際に起こる自動的な反応で、両眼視に必要な機能です。

これにより、物の立体感が得られます。そのため、両眼視機能が低下していると、物の立体感を捉えにくくなります。

輻輳・開散運動に不具合があると両眼視が上手くできず立体感が得られません。スポーツ時や車の運転などに支障を来す恐れもあります。

融像(立体感)深視力(遠近感)

次に、両眼視と立体視について解説します。
遠くの物を見たときに、右目と左目では、眼球の位置が離れているため、異なった網膜像が脳に送られます。本来なら、左右の画像がダブって見えることになります。しかし、脳は、このズレた二枚の画像を上手く融合させます。この画像処理を「融像」と呼びます。この融像は、視覚に立体感を生み出します。

最近では映画やゲームも3D化され、VRなども普及しつつあります。これらの映像技術は人間が持つ両眼視機能が応用されており、立体感を平面上で疑似的に体現できる技術です。脳に錯覚を起こさせるものでもあるので、「眼精疲労」や「映像酔い」を生じる恐れがまります。