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万物を照らす光。生命は進化の過程で、目から光を取り込むことで、見るという感覚を獲得しました。そして、私たち人類は、火を焚き、電気を灯し、自らが光を作り出すことで闇を克服し、光に満ちた豊かな世界を手にいれました。

一方、現代社会におていは、光を「まぶしい」「痛い」と感じる人が増えてきたのも事実です。特に、パソコンやスマートフォンが発する光や室内のLED電球を「異常にまぶしい」と感じるようになってしまう場合があり、こうなると生活に著しく支障が出てしまいます。

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実は、この文章の筆者である私も「光がまぶしい」という症状に悩まされている一人です。なぜ、過剰に光を眩しく感じてしまうのでしょうか?そもそも光とは何でしょうか?

光とは何か

私たちは、光がない暗闇では、物を見ることが出来ません。光は電磁波の一種です。理科で学習したように、電磁波には様々な種類があり、生活に欠くことが出来ないものです。

人工的なもので言えば、ラジオ波、テレビの電波、携帯電話の電波、電子レンジのマイクロ波、またレントゲンに用いられるX腺などが挙げられます。また、太陽光の中でも、お馴染みなのは赤外線、可視光線、紫外線でしょう。

太陽光の中でも、私たちの目が感じることでの出来るのが、可視光線です。可視光線はプリズムをあてると分裂し、人間は、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤の七色の光を識別できます。

プリズムによる光の拡散ブールライト図

電磁波の特性

電磁波は振動しながら空間を直進する性質があります。それぞれ波には長さがあり、これを波長(はちょう)と呼びます。ここまでを図でまとめてみましょう。

光のスペクトラム


人間の視覚と色彩の関係

電磁波は波長が短い程、エネルギーが大きく、直進性が高い性質を持っています。例えば、X線やγ線は非常に波長が短いので、人体組織に直撃・透過し障害を与えるほどのエネルギーを有しています。逆に、携帯の電波など、波長の長い電波は、障害物に当たっても、回り込み作用がありますので、建物の陰でも電波が届きやすい性質があります。もちろん人体には害はありません。

可視光線とは

次に私たちの目との関連性を考えながら、可視光線について解説します。図にもあるように、目に見える光にも種類があり、それぞれ波長が異なります。紫色に近い方が波長が短く、赤色に近づくほど波長は長くなります。人間の網膜には3色(赤・緑・青)光の波長と相関する3種類の錐体細胞(L.M.S)が存在し、色の3原則を得ることで数万の色彩を検知できる視機能を有しています。

網膜 錐体細胞と杆体細胞

ブルーライト、バイオレットライトとは

紫・青などは波長が短く直進性の強いエネルギー(光子)を有しています。これが、いわゆるブルーライトと呼ばれるものです。ブルーライトとは、色の中で最も波長が短い光(380~500nm)のことで、青色や紫色を基調としています。波長が短いとエネルギーが強く、高エネルギー可視光線(HEV)とも呼ばれています。

水晶体に吸収される紫外線


つまり、可視光線の中でも波長の短い光は、光子エネルギーが強いため、青色の強い光を直接見ると網膜に傷害を起こす危険性があることが、一部の研究などでも指摘されています。

角膜や水晶体を通過して網膜まで到達する可視光線のなかで、ブルーライトは最も強い光エネルギーを持ているのです。ブルーライトによって引き起こされる目の障害は、青色光網膜傷害とも言われています。

紫外線とは

紫外線に関しては、皆さんも大抵のことを、ご存じだと思います。可視光線は透明な角膜と水晶体を透過して網膜に像を映します。しかし、私たちの目は、同じ光でも紫外線は角膜や水晶体に吸収され網膜には到達しないようにできています。強い紫外線を浴びると角膜炎を起こすことあります。これは海水浴やスキー(雪目)で起こります。

また、長期的な紫外線への暴露は白内障の原因になるとも言われていますので、ここでは紫外線と目に関係する話をします。

紫外線は太陽光線の一種で、日本では初夏から本格的な夏をピークに多量の紫外線が降り注ぎます。紫外線はUV(UltraViolet)と言われ、UV-A、UV-B、UV-Cに分かれます。

電磁波としての紫外線

可視光線の紫色(波長380-360)よりも、さらに波長が短く、人の目では見ることはできません。紫を超えて波長が短いということで、UltraVioletと名づけられたそうです。

UV-A 波長 320–380 nm(5%が大気を通過)
UV-B 波長 280–320 nm(0.5%が大気を通過)
UV-C 波長 200–280 nm(大気で完全に吸収)

紫外線には、殺菌消毒、ビタミンDの合成、生体に対しての血行や新陳代謝の促進があります。

特に骨の発育には紫外線によるビタミンDの活性化が欠かせませんので、適度に日光(紫外線)を浴びることは健康維持増進にとって必要不可欠です。

ブルーライトと脳

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ブルーライトは目にとって悪者と思われていますが、むしろ、ブルーライトは生体リズムに必要不可欠で、抗うつ作用もある優れものです。さらに、太陽光に含まれるバイオレットライト(紫色の光)は、子供の近視抑制に効果的という医学的な見解もあり、子供が外で遊ぶことが「目の健康的な発育」につながると言われています。

つまり、ブルーライトは、生体には必要だけど、度が過ぎると害になるというジレンマを抱えているのです、

ブルーライトと不眠症

ブルーライトが概日リズム(生体リズム)を中心とした覚醒・睡眠という脳の活動(体内時計)に影響を及ぼすことは異論の余地が無いようです。つまり、夜にブルーライトを大量に浴びると「睡眠の質」が悪くなるという指摘です。

ブルーライト


適度な紫外線が私たちの身体の新陳代謝に必要なように、ブルーライトそのものは害でなく、むしろ脳のバイオリズム(概日リズム;起きる→活動する→寝る)体内時計の安定に大きく関わっています。

通常、私たちは太陽の光で目が覚め、脳が覚醒し、活動がはじままります。この脳の覚醒に太陽光に含まれるブルーライトが深くかかわているのです。

まず、ブルーライトによって網膜の神経細胞が刺激を受けるます。すると、その刺激が視床下部から松果体に伝わり、睡眠モルモンであるメラトニンの分泌が一時的に抑制されます。そして、徐々にメラトニンが増えてくると眠くなるという仕組みです。

そのため、夜にブルーライトを浴びてしまうと、脳は昼間と勘違いして、覚醒状態を維持とします。その結果、夜なのに眠りに入れない、眠りが浅い、途中で目が覚めしまうという睡眠障害を引き起こす可能性があるのです。逆に、昼間に眠いという状態につなりかねません。

寝る2時間前にはスマホやPCを見るのを止めましょう、という話です。

LED照明×ブルーライト

ブルーライトの話で思うのは、太陽光に含まれるブルーライトと人工LED照明から出るブルーライトを分けて考える必要があるのではないか、ということです。

LED照明やスマホ画面の青系色を「まぶしく」感じたり、「痛み」として感じる人がいます。私自身も、LEDが発するブルーライトを刺激として感じます。これは、人工的に光量や明度が調整されているという点が問題なのかもしれません。

LED照明は、照光範囲が狭いぶん直進性が高く、シャープな明るさが得られます。LED照明は、レーザービームのような性質を持っています。マイクロチップによる発光なので、省エネ、抑熱性に優れており、明るさも持続します。しかし、人によっては、自然光に含まれるブルーライトは問題ないが、LEDによる人工ブルーライトを非常にまぶしく感じる人がいます。

インフラやデバイスとしてのLED照明は、明るさ(実用性)が重要で、目に優しいかどうかは次点なのかもしれません。まして、動画やゲームなどは光による演出が加わります。

そういった点でも、一日の大半を、人工的なブルーライトに晒されて過ごすという生活様式を、あらためて考えなければならないでしょう。

尚、PCやスマホを見る以外でも、日常的にブルーライトをカットする眼鏡を掛けていると、かえってブルーライトをカットしすぎるので、目に悪影響が出るという研究もあります。ブルーライトを過剰に予防するのも行き過ぎなのかもしれません。

その点は、専門家である眼科や眼鏡屋さんに相談したうえで、適切なブルーライトカット眼鏡を作る必要があることを末尾に添えておきます。

LED液晶の性質

なぜ、液晶ディスプレイはブルーライトが強いのでしょうか。ブラウン管モニターが支流だった昔は、それほどブルーライトについて言われていなかった気がします。

それは、最近のデスプレイは、LED(発光ダイオード)で出来ており、LEDはブルーライトを主な発光源としているからです。

LED電球


ちなみに、青色発光ダイオードの発明(光の3原則が揃う)により90年代半ぐらいから、LED照明の実用化が始まりました。LEDは光が強い、悲産熱性で、省エネ、有害物質を含まないという大きなメリットがあります。

しかし、青系の光の量が多いという点が、実は「まぶし」「眼精疲労」につながってくるのです。そして、LED電球が普及するとともに照明に対してまぶしいさを訴える人が急増しています。

鮮明な画像を可能にしたLED。意識しないうちに、世界が、柔らかく鈍い光から、強く細かく鋭い光に置き換わりました。技術革新に私達の目がついていけない、という現象が一部で起きているのかもしれません。