多くの場合、重度の眼精疲労は複合的な原因が問題となっています。そのため、眼科などで、目だけ治療を受けても症状が完全には良くならない場合があります。

【眼精疲労は目と心身のケア、及び環境整備が大切】
目の酷使や眼病によって生じた眼の不具合により、目・首肩・背中に広範囲な「コリ」が蓄積し、首(頸椎)や脳(精神)に負荷が生じた状態となります。その結果、目の機能不全や、頭痛、めまい、身体の痛み、自律神経失調症、睡眠障害、慢性疲労など実に様々な症状を生じます。それらはメンタル要因や環境要因の影響を受け悪化し、さらなる悪循環に陥ることがあります。

また、最近では耳(平衡感覚や三半規管)と眼精疲労(眼球運動や視覚認知機能障害)の関連性も示唆さており、PPPD(持続性視覚性姿勢誘発めまい)などの病態が明らかになっており、耳鼻科や眼科の連携も必要な場合もあります。

眼精疲労の6大要素】

  • 目の不具合(視覚疲労)
  • 首肩のこり(頸椎疲労)
  • 自律神経失調(脳疲労)
  • メンタル要因(精神疲労)
  • 食生活・睡眠(生活習慣)
  • 環境要因(環境疲労)
眼精疲労の6大要因

眼精疲労はコリの病(やまい)
当院では、目の酷使によって、広範囲に生じた「筋肉のこり」「神経疲労」「血流不全」に着目しています。そのため、鍼で「こり」を取り除いていくことが最大のポイントとなります。眼精疲労治療において、視機能の足枷となる「種々の筋肉のこり」を取り除くことが回復の早道と考えています。

では、なぜ目を酷使すると、目の周りや首肩が凝るのでしょうか?その鍵となるのが「目で物を見るの仕組み」です。

一般的に私たちが物を見る過程は3つに分けられます。第一が、瞼を開け、角膜・水晶体を透過した光を網膜に収束させる段階。第二が、網膜細胞により光が電気信号に変換され脳に送られる段階。第三が、脳で電気信号を画像として処理する最終段階です。

このうち、第一段階では、脳が最適な画像処理を行えるように、目や身体の様々な筋肉による協調運動が行われます。

  • 瞼の開閉(光量調節や涙液調整)
  • ピント調整(毛様体筋)
  • 瞳孔調節
  • 眼球運動(寄せ目・向き目)
  • 眼輪筋と眼瞼挙収縮による集中・固視動作
  • 頭部(視線)を固定する姿勢保持筋(首肩部)
  • 体幹を固定する姿勢保持筋(腰背部)

これらの筋運動は、神経によって制御され、血液により栄養供給を受けています。目を酷使することにより、視機能を支える筋肉に労作性疲労が起こります。そして、血流や代謝が不足した状態引となります。

つまり、眼精疲労は、目の酷使によって、慢性的な筋疲労が広範囲に起きている状態であり、私たちは、筋疲労を「こり」として認識します。尚、毛様体筋や眼外筋などは触知できませんので、それらの「代償性のこり」を探し当てアプローチします。

視機能を支える、これらの筋肉が疲労を起こすと、脳が上手く画像処理を行えなくなります。その結果、脳に余計な負荷がかかります。いわゆる、視覚性脳疲労の状態(神経疲労)となります。これが重度眼精疲労や自律神経失調症の原因です。さらに精神的ストレスが加わると難治性となります。

また、視機能に大きな影響を与えるのが環境要因です。例えばデスクワークの作業環境です。モニター画面の大きさや彩度、光の映り込み、室内の照明など。また、過度に乾燥したオフィスでは、ドライアイになりやすく、ドライアイになると目が疲れやすくなります。また、シックハウスの原因となる揮発性の環境有害物質は、目や脳神経に刺激を与え、眼精疲労の症状を誘発します。室内の空気室がアルカリ性に傾いていると、空気中の水分と結合して乾燥状態を作りますし、化学物質を含んだ空気は細胞毒性を生じる場合がありますので、目の粘膜が障害を受けてしまうことがあります。オフィスや住居の空室環境が原因で眼精疲労が重症化している場合も少なくありません。

さらに、視機能は精神的な要因によって影響を受けます。鬱病や不安神経症、心身症など、状態によっては、ピントが合いにくかったり、光を極端にまぶしく感じる場合があります。また、近年ではベンゾジアゼピン系の薬の副反応や離脱症状により、重度の眼精疲労や眼瞼痙攣が誘発される場合が報告されています。