眼球を構成する網膜ブドウ膜胸膜

眼球を包む膜の構成

眼球の壁は「強膜」「ぶどう膜」「網膜」の3層からなり、その内部は水晶体により前後に二分(前眼部・後眼部)されます。さらに眼球を構成する膜には、外界と接する「角膜」と「結膜」が存在します。眼科医療では、角膜外来、緑内障外来、ブドウ膜外来、網膜・硝子体外来など、眼球の構成部位に応じ、専門分野が細分化されています。
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強膜(外壁)

眼球のうち、角膜を除く5/6を覆う外側の膜が強膜です(眼球=白色というイメージの元)。滑らかで強靭な繊維性の結合組織から成っています。血管が少ないため白色で、その後部は視神経を包む膜に移行しています。家でいう「外壁」の部分です。

角膜と結膜と強膜の位置関係について

角膜は、瞳孔(黒目)の前面に位置する、透明な無血管組織です。一方、私たちが白目と呼ぶ部分は結膜と強膜の二重構造になっています。上層部は透明な結膜で、下層部が白色の強膜です。

結膜も強膜も、毛細血管が豊富にあるため、血管が怒張すると、いわゆる充血目となります。二重構造になっているので、結膜血管が怒張している場合は結膜炎。強膜の血管が怒張している場合は、強膜炎となります。強膜炎は膠原病由来の場合があり、自己免疫疾患との関連性も重要となります。

角膜

角膜は、強膜が唯一到達していない透明な組織で、家でいう「光を取り入れる窓」にあたります。角膜は5層からなり、外界に接する角膜上皮細胞、ボーマン層、角膜実質層、基底膜、角膜内皮細胞があります。角膜上皮は、角結膜輪部に存在する幹細胞(ステムセル)から細胞分裂が行われるので、皮膚のようにターンオーバーがなされています。そのため、多少の傷は数日で修復されます。一方で、角膜実質はターンオーバーがありません。この実質層をエキシマレーザーで蒸散さ、近視や乱視を不可逆的に治すのがLASIを代表とする屈折矯正手術です。

角膜の構造

眼科鍼灸では、LASIKなどの屈折矯正手術を受けた患者さんのケアなどが臨床上重要です。また、ソフトコンタクトレンズの長期使用による酸素不足によって起こる角膜内皮細胞減少症なども理解する必要があると思います。その他、角膜疾患には、角膜ジストロフィーや角膜が円錐状に歪み不正乱視を来す円錐角膜などがあります。

円錐角膜

ブドウ膜(中壁)

ぶどう膜の解剖学的特徴は非常に重要なのですが、結構スルーされてしまっていて、ブドウ膜って何という鍼灸師も多いのではないでしょうか。まず、ブドウ膜というのは、眼壁の中層にあたり、脈絡膜、毛様体、虹彩の三つを合わせた総称です。眼科では、ブドウ膜外来などの専門外来があります。

ブドウ膜の特徴は二つあります。一つは、眼球内部を暗室状態(映画館状態)にすることです。角膜から入った光を網膜に効率よく収束させるためには、眼球内が暗室である必要があります。そのため、ブドウ膜にはメラニンという色素が多く含まれています。ちなみに原田病は、このメラニン色素が炎症を起こす自己免疫疾患ですが、メラニン色素の多い組織である目、耳、髄膜、皮膚、毛髪などに多発的な炎症を生じることがあります。

そして、二つ目は、眼球に張り巡らされている神経や血管の経路としての役割です。ブドウ膜は、家でいう外壁と内壁の中間部分で、家だと電気配線や配管などを通すルートです。人間のブドウ膜も同様で、目の奥にある眼動脈から分岐した血管網が、ブドウ膜を通って眼球全体に栄養や酸素を供給しています。また、眼圧をコントロールしている房水循環においても、房水生産、及び老廃物や水分吸収はブドウ膜が担っています。

網膜(内壁)

眼球壁の最内部は、網膜と呼ばれ、光の刺激を神経の興奮(電気信号)に変え、視神経から脳へ伝える部分です。網膜はカメラの「フィルム」に例えられます。基本的に、網膜の視細胞が損傷した場合、視機能を回復するのは難しいと言われていますので、非常に大事な組織です。網膜疾患では、網膜剥離、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、黄斑変性症などが代表的です。

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