風邪を引いた後や、過度なストレスや過労により、突然物が二重に見えるようになったというケースが多いようです。原因不明の場合も多く、脳の病気から生じることもあるので、まずは病院での精密な検査が必要です。
また、外傷などで起こることもあります。当院では、眼球運動障害・眼外筋麻痺の治療経験は多く、重症例でも「ここまで回復するケースは珍しい」と医師が驚くような改善例もあります。
鍼灸治療による神経修復作用
1. 血流促進
鍼刺激によって脳神経周囲の血流が促進され、損傷した滑車神経や動眼神経などの神経組織への酸素や栄養供給が改善されます。この血流改善が神経再生に寄与する可能性があります。
2. 炎症軽減
鍼灸は炎症を抑える効果があるとされ、特に神経痛や神経障害に伴う炎症反応を軽減することが報告されています。これにより神経組織が正常な状態へ回復しやすくなります。
3. 神経成長因子(NGF)の分泌促進
一部の研究では、鍼灸による刺激が神経成長因子(NGF)の分泌を増加させることが示されています。NGFは損傷した神経細胞の再生や修復に重要な役割を果たします。
4. 神経伝達改善
鍼による刺激は脳内でエンドルフィンやセロトニンなどの神経伝達物質の分泌を促すことで、神経機能を調整します。これにより神経伝導路が正常に回復することが期待できます。
動眼神経麻痺とは
動眼神経麻痺(どうがんしんけいまひ)とは、脳神経の一つである動眼神経(第3脳神経)が障害されることで、ピント調節、瞼の挙上、眼の動きや瞳孔反応に異常が生じる状態を指します。動眼神経は主に以下の機能を担当しています。
動眼神経の役割
- 眼球運動
上直筋、下直筋、内直筋、下斜筋を支配し、眼球を上・下・内側へ動かします。動眼神経が障害を受けると、目が外側や下側に偏る(斜視)ことがあります。 - 瞳孔の調節
瞳孔括約筋を支配し、瞳孔の縮小に関与します(光に対する反応)。動眼神経が障害を受けると光に対する反応が低下し、瞳孔が散大し、光を眩しく感じてしまうことがあります。 - 上眼瞼挙筋の支配
上まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)を動かします。動眼神経が障害を受けると上まぶたが下がり、目が開けにくくなります。
滑車神経麻痺(かっしゃしんけいまひ)とは
滑車神経麻痺は、4番目の脳神経(滑車神経;かっしゃしんけい)という眼球運動をコントロールする神経が、何らかの理由で機能しなくなった状態(麻痺)を指します。
滑車神経が障害を受けると、眼球運動に制限が生じ、特に眼球が内下方に動かしにくくなるのが特徴です。
患者さんは、目線を上に挙げる際(上方視)に、両眼の運動が同調せず、複視(二重視)を生じることが特徴です。
また、眼球運動制限を頭位(頭・首の角度)で代償する必要があるため、視線を上に保つために頭を後ろに傾ける(首を伸ばす)傾向があります。
滑車神経麻痺の原因は多岐にわたり、先天性のものから、外傷、血管障害、感染症、腫瘍、炎症性疾患、手術後の合併症などが含まれます。
原因によっては自然に回復することもありますが、回復までに時間がかかる場合があります。鍼治療で眼球血流を促進することで、回復を早める効果が期待できます。