はじめに

私たちが物を見るためには、目に取り込んだ光(光子)を、網膜の視細胞が電気信号に変換して送信。そして、視神経を伝わった電気信号を脳が処理するという工程が必要です。網膜は、眼球の最も内側にあり、光を透過する10層に及ぶ膜構造からなっています。

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光を感知する視細胞は、網膜の一番深部にあり、網膜色素上皮細胞に支持されています。光の粒子は9層を通過して、最深部の視細胞と反応し電気信号を発生させます。

網膜の構-1

網膜の細胞は、奥側から視細胞、双極細胞、神経節細胞があり、神経節細胞から伸びた神経線維が集まって視神経を形成しています。また、細胞間のネットワークを支持する水平細胞やアクマリン細胞も存在します。

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今回の主役は、この視細胞です。視細胞は「錐体細胞(ついたい)」と「桿体細胞(かんたい)」の2タイプに分かれます。

世界に色彩を与える錐体細胞

人間の網膜には、赤、緑、青(光の三原則)を感知する視細胞が存在します。赤、緑、青をブレンドすることで私たちは100万もの色を識別することができると言われています。ちなみに、犬の網膜に色彩を感知する細胞が2原色(赤と青)しかなく、全体が青黄く見えています。人間の錐体細胞には、L(赤錐体)、M(緑錐体)、S(青錐体)があり、それぞれが波長特性を持っています。

昼と夜-2

ただし、この錐体細胞は、多くの光がないと働かないので、太陽や電気のような明るい光が必要になります。錐体細胞は、網膜の中心部分に密集しており、高い視覚能力を有しています。

暗いところで真価を発揮する桿体細胞

私達の目は、暗闇でも微かな光があれば、物を識別することができます。暗がりでは、桿体細胞が光を感知します。桿体細胞は感度が高く、少量の光にも反応できます(タングステンタイプ)。しかし、色の識別は出来ません。桿体細胞は網膜の周辺部分に多く分布しているので、見え方はいまいちです。

視細胞の構造

視細胞の詳細-1

視細胞は内節(細胞支持器官)と外節(電気発生装置)に分かれています。錐体細胞の場合、円板に存在するフォトプシンが3つの分子配列に分かれており、吸収する光の波長が異なります。その結果、私達は明るい光の中では視覚に色彩が得られています。

光の粒子と結合するナノ世界の話

錐体細胞では、視細胞の円板部にフォトプシンというタンパク質に包まれる視物質があり、レチナールという物質を蓄えています。オプシンとレチナールを合わせてフォトプシンという訳です。(桿体細胞の場合はロドプシンです。)

このフォトプシンが光と結合すると細胞膜のナトリウムチャネルが閉じて、細胞膜外のナトリウムが増加し脱分極(オーバーシュート)が起こります。電気信号は双極細胞、神経性細胞、視神経を経て脳に送られます。

夜盲症の原因は?

光が暗くなると、視細胞は桿体細胞にバトンタッチされます。桿体細胞は色の識別はできませんが、ごくわずかな光からも電気信号を発生させることができます。夜の暗がりでは、桿体細胞が活躍します。この桿体細胞の外節にある視物質はロドプシンと言われます。ロドプシンという蛋白質はビタミンAによって構成されていますで、ビタミンAの摂取量が少ないと、ロドプシンの働きが弱くなり、暗いところでの見え方が悪くなります。これが、いわゆる夜盲症です。尚、夜盲症は、網膜の病気などでも起こります。

私たちは、なぜ色が見るのか?

リンゴは、なぜ赤く見えるのか考えたことはあるでしょか。私たちの世界は、あらゆる物が色彩を持ち、色鮮やかです。そもそも「色」とは何なのでしょうか。

太陽や電球は、直接光を発する光源です。そのため、太陽や電球の「色」は「光の色」だと言えます。

一方、光を発しない物体は、光が反射(投影)されることで、初めて色を見ることができます。(暗闇では色は見えません。)

全ての物体は、特定の色を反射、または吸収する性質を持っています。例えばリンゴは、太陽や電球の光を受けると、七色の光のうち赤色を反射します。その反射した赤色の光が、私たちの目の網膜に到達すると、赤い色として見えるのです。