物を見る際の、ピント調節に関わるのは、水晶体と毛様体筋とチン小帯という3つの組織です。水晶体(クリスタルレンズ)は、角膜の後方にある透明なレンズです。水晶体は、水分を多く含んだ弾性繊維から成り、糸(チン小帯)を介して、毛様体筋に360度周囲を固定されています。特に毛様体筋(平滑筋)はピント調節筋とも呼ばれ、この毛様体筋の疲労が眼精疲労の原因の一つと言われています。

水槽隊シェーマ

水晶体は、角膜と共に光を屈折させ、網膜の中心部分に光を収束させる役割を持っています。また、水晶体は非常に弾力性のある組織で出来ており、毛様体筋の働きにより、厚くなったり、薄くなったり形が変形することで、ピント調整(オートフォーカス)を行っています。

水晶体の厚み


かつては、ピント調整機能の低下・衰えを「老眼」と呼び、40代前半ぐらいから起こる老化現象とされていました。しかし、近年では20代や30代の若い世代でもピン調節に著しい機能不全を来す例が増えています。このような場合、スマホ老眼などの症状が該当します。一方で、若年層における心因性・精神性のピント調節不全という症状がありますが、あまり知られていない病態です。これはピント調節(意識の集中)が、脳や心の働きと潜在的な関係があることを示しています。

水晶体

水晶体は直径約10mmの両面が凸レンズ様の物質で、特殊な繊維状の細胞で出来ています。柔らかく弾力性に富んでいます。水晶体は、やや黄色がかった透明色で、無血管の組織です。網膜にとって有害となる紫外線をカットしています。水晶体が混濁すると、光の屈折率や透過率が悪くなり、視力が低下する、視界が霞んで見える、光がまぶしく感じるなどの症状を来し、これを白内障と呼びます。また、弾力性が低下するとピンと調節力が落ち、いわゆる老眼傾向となります。

次に、水晶体の特性を詳しく見ていきましょう。

水晶体は、カメラのレンズに当たる部分で、ピントのオートフォーカスを担っています。この水晶体が加齢とともに弾力を失って硬くなり、ピント調節機能が低下した状態が、皆さんもよくご存じの「老眼(老視)」です。最近では、20代前半の若者でも、ピント機能が低下し、治療的に遠近両用メガネを使用するなどケースもあります。

子供の水晶体は、みずみずしく弾力性に富んでいます。しかし、30歳を過ぎた頃から、水晶体の細胞内の水分が、徐々に減少していきます。40歳を過ぎるころには、老廃物の蓄積により、透明性や弾力性がさらに低下していきます。

水晶体の透明性について
水晶体は玉ねぎのような構造をしています。水晶体は、ほとんどが水(65%)とタンパク質(35%)で構成されています。水晶体は外側から、水晶体上皮、水晶体皮質、水晶体核から成り立っています。

水晶体の構造-1-1024x724-1

水晶体は嚢(のう:Capsule)という透明な袋に包まれており、その袋の中で細胞分裂が行われ、成長から老化というプロセスを経ます。皮質は水晶体上皮細胞が生産した線維細胞が積み重なってできた部分です。さらに中心部には繊維細胞が集積され、「核」と呼ばれる部分が形成されます。

一般的な人体組織では、細胞が生まれ変わる際に生じる老廃物を、マクロファージなどが吸収(消化)します。

眼房水による代謝はありますが、水晶体内には血管がありません。そのため不要になった代謝物は、嚢(のう)の中に蓄積されていきます。長い年月をかけて、少しづつ容積は増ていきます。その結果、水晶体の中央が圧縮され、硬い核が形成されていきます。

この水晶体が白く濁る病気が白内障です。

白内障は加齢性変化で起こるものが一般的ですが、アトピー性皮膚炎、眼外傷、強度近視(病的近視)、紫外線暴露、網膜剥離の手術後など、若年層などにも起こることがあります。白内障そのものに対して鍼治療を行うことはありませんが、患者さんが、まぶしさや見えにくさを訴えた場合は、眼科受診を勧めることがあり、白内障が見つかるケースもあります。

白内障手術とは

一般的に、白内障の手術は、濁った水晶体を超音波で砕いて吸引し、代わりに人工レンズを挿入するものです。人工レンジは単焦点、多焦点、また乱視を矯正するトーリンクレンズなど様々な種類があります。

白内障の手術

毛様体

脈絡膜の前方に続く海綿様に肥厚した部分が毛様体です。毛様体から内方に伸びる小さな糸のような繊維を毛様体小帯(チン小帯)と呼び、水晶体は一定のテンションを保ちながら支持されています。毛様体の中には平滑筋である毛様体筋があり、水晶体の厚みを調整し、焦点距離を変化させます。(オートフォーカス機能、自動ピント調節機能)。眼精疲労は、毛様体筋の疲労が原因の一つと言われています。

毛様体筋の図

毛様体から起こり、水晶体の前方でこれを周囲から縁どるように存在します。カメラの絞りにあたるもので、中心の空洞部分は瞳孔(直径3~6mm)と呼ばれます。虹彩は、神経、毛管、色素細胞に富んでいます。虹彩は、内側を輪走する瞳孔括約筋(副交感神経)があり、外側には放射状に走る瞳孔散大筋(交感神経)から成っています。この2種類の平滑筋が、網膜に入る光の量を調整しています。虹彩は、角膜という窓に掛かる暗幕のカーテンです。

縮瞳に関係する瞳孔括約筋は動眼神経の副交感線維が接続しています。一方、散瞳に関係する瞳孔散大筋は頚部の「上頚神経節」から交感神経線維がつながっています。

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