重度眼精疲労の方の中には、目の症状のほかに、「呼吸がしずらい」「息が苦しい」「喉が詰まった感じがする」「声を出しづらい」といった症状を訴える方が少なくありません。

実際に、お問い合わせや予約の電話の時に、声がかすれて聞き取れないような状態の方もおります。なぜ、眼精疲労から息がしずらくなったり、声が出ずらくなったりするのでしょうか?

まず、声が出にくくなる原因には

・風邪でのどが腫れる
・喘息などのアレルギー
・声の出しすぎでのどがかれる

などがありますが、これらは比較的起こりやすいものだと思います。

但し、呼吸が苦しい、声が出しづらい、という症状は時に要注意なことがあります。

呼吸はご存知のように「心肺」に関連した生理機能です。COPD(肺気腫)や肺繊維症などの怖い病気もありますが、このような場合は血中酸素濃度や1秒率などに低下がみられ、CTなどで比較的診断がつきやすい病気です。また、膠原病由来の細気管支炎や間質性肺炎など、非常に深刻な肺の病気もあります。

また、声がかすれる症状に「嗄声(させい)」というものがありますが、こちらは甲状腺腫、食道がんや肺がん、大動脈瘤などで反回神経が圧迫・侵襲されることで起こる場合があります。

実際は、病院の検査では異常がなく、医師からは「精神的なストレス」が原因と言われるケースが多いと思います。

Kさん(20代後半女性)のケースも、耳鼻科でのCT及びファイバースコープで頸部や声帯などに異常がないので、精神的な問題とされ、心療内科の受診を勧められたということでした。ただKさんは、最近、首や肩が異常に凝っていたことに気づき、鍼が効くのではと考えて当院を受診しました。

当院では、首肩・背中の治療を集中的に行いました。特に、首の側面と前面の筋緊張が強かったため、眼精疲労由来の前頸部過緊張を疑い、眼精疲労の治療も合わせて行いました。

4回の治療で、声が出にくい症状は、ほぼ完治しました。これは重度の眼精疲労→前頸部のこり→反回神経の圧迫→声が出ずらい、といった悪循環が起こっていたケースだと思います。


また、呼吸の際は、「首の筋肉」や「胸の筋肉」が呼吸補助筋として働きますので、これらの筋肉が極端にこると、息が苦しいという症状にもつながります。

大抵の場合は、眼精疲労を治療して、首肩背中、胸筋を緩めることで、症状の改善を得られるのですが、Sさん(30代後半女性)のケースは、回復までに相当な時間を要しました。

Sさんは鍼治療を受けると、その日は症状が改善するものの、翌日には息苦しい状態に戻ってしまいます。治療開始から3か月ぐらいった時でしょうか、Sさんの「息が苦しい」という微かな声が、「生きるのが苦しい」と聞こえたのです。

そしてSさんに「生きていくうえで何か息苦しさを感じておられるのですね」と声をかけたところ、堰を切ったように「人生に行き詰まっている辛い現状」をお話しくださいました。そこから治療方針を変え、メンタルケアも合わせた鍼治療を行い、大幅な改善が得られました。Sさんの息苦しさを改善させたのは、心強さ・・・でした。

尚、東洋医学的には、喉の詰まり感を「梅核気(ばいかくき)」といいます。これは、気がのどのに詰まった状態を示し、肝の病(肝気のうっ滞)とされています。また、現代では、ヒステリー球とも呼ばれています。肝は目と関連性が高いので、こちらも理にかなっていると思います。