眼精疲労において、目と心の関係性は、切り離せない問題です。実際に、重度の眼精疲労の患者さんの中には、過去・現在に、甚大なストレスを受けた経験を有している方が少なくありません。
そこで、私たちが取り組んでいるのが、メンタル鍼灸という分野です。私たちは、「目と心の関連性」に着目し、鍼灸施術を行っています。
1、目の症状により心を痛めるケース
目の病気には様々なものがあります。突然、目の中で出血が起こる眼底出血や、急に網膜がはがれる網膜剥離など。今まで普通に見えていた人が、著しい視力の低下を被ったり、視界がゆがむ後遺症を来したり、入院や手術など、今までの生活が一変することがあります。
また、緑内障や網膜症、目の難病などは、徐々に視力が失われるかもしれない不安を抱え、生きていくことになるかもしれません。
日常生活において、多くの情報は、目から得ています。そのため、ひとたび目に不具合を生じると、今まで容易にできていたことが出来なくなります。また、周囲とのコミニュケーションンに支障を来すことで、非常に心身に負担が掛かります。
その結果、学校を休みがちなったり、職場を休職したり、家事や育児に行き詰まったり、夢をあきらめてしまっりと、人生そのものが揺らいでしまいます。
もし、目の病気が完治しないものであれば、私たち鍼灸師は、眼精疲労の緩和を図り、少しでも目を使いやすくしてあげることで、患者さんの負担を軽減することが治療の目的となります。目の病気と上手く付き合っていく、そのようなマインドセットを患者さんが行えるよう、精神的なケアも含めた治療を行うよう心がけています。
2、心の不調から目に症状が出ているケース、心身症と眼精疲労
心身症は、メンタル疾患と言うよりは、内科疾患であると言わています。実際に、様々な鍼灸院が、不定愁訴を抱える患者さんの治療に取り組んでいると思います。心身症は、多くの人が抱える問題です。そして、今まで健康に過ごしてきた人にも、突然のストレスによって心身症が引き起こされる場合があります。自然災害やコロナ禍による生活環境の激変など、今後ますます心身症は社会的な課題となります。
Aさんは、50代のご主人が、脳出血で急死し、その後から、重度の眼精疲労と眼瞼痙攣の症状に悩まされるようになりました。ご主人との急な別れを受け入れることが出来ず、今なお自分を責めているという感じでした。
道を歩いていると、意に反してギューと目が閉じてしまうため、電信柱にぶつかりそうになったり、道路で立往生してしまったり、一度閉じた目は自分の意志では開けることが出来なくなります。
眼瞼痙攣の症状は、いつ起こるかわかりません。そのため、一人では外出することさえできない状態でした。
脳外科では異常がなく、眼科でボトックス療法を受けても症状が改善しないので当院を受診。精神科での薬物療法を受けても、目の症状に変化はありませんでした。ご主人がなくなる前までは、健康的な生活をしていたとのことでした。
心身症の症状は、胃腸障害や慢性疼痛などが有名ですが、目に機能的な症状が出る場合も少なくありません。ピント不全、眼瞼痙攣、斜視や斜位、眼瞼下垂や眼精疲労などが、その典型です。