なぜ目には涙が必要なのか、涙の役割とは?

普段、涙が問題なく出ている方には、ドライアイの辛さは、ピントこないかもしれません。しかし、これだけは断言できます。重度のドライアイは非常に辛いし、とても目が疲れます。

目の表面は粘膜で出来ており、外界の空気と直に接する場所です。新型コロナウィルスも、目の粘膜から感染を起こす例が、報告されています。他にも、口腔や鼻腔、気管支など外界と接する場所は様々です。その中でも、目は角膜の透明性を維持し、光を網膜に透過させる必要があるため、最も繊細な組織と言えます。

涙は耳側の主涙腺・副涙腺で生産され、瞬きの刺激で分泌されます。目の表面を外側から内側へ流れ、鼻側にある上下涙点から鼻涙管へと排出されます。涙は、マイボーム腺から出る油分と、粘液であるムチンと混ざり、重層構造をなしています。

涙の流れの図

あまねく光を透過するには、レンズである角膜組織に傷や瘢痕が出来きないように、しっかりと防御しなければなりません。角膜は、傷が出来たら直ぐに治せる高い修復機能を有する必要があります。また、細菌やウィルスの付着や増殖を防がなくてはなりません。その一役を担っているのが「涙」なのです。ですから、涙は目の生命線と言っても過言ではありません。

さらに、他の粘膜と異なる点は、角膜には血管がないことです。もし角膜に血管があると角膜に凹凸が生じ、網膜に歪んだ像が映ってしまいます。血管がないことが、透明であることの条件です。

そもそも、人体において血管(血液)は、二つの役割があります。一つが細胞への栄養供給。そしてもう一つが白血球を中心とした免疫です。角膜は、血管がないため、代謝と免疫を自己では十分に行えません。涙が頼りなのです。

このように、涙は単に粘膜を潤しているだけでなく、酸素・栄養供給、免疫、傷修復など、実に多くの役割を担っています。

涙は、どこから来るのか?涙はどこで、何を原料にして作られているのか?

涙は、以下の三つの成分が重層化されたもので、それぞれ排出場所が異なります。
1)水分 
2)油分 
3)ムチン

水分血液を原料に涙腺で作られるのが涙の主成分

水分は主涙腺と副涙腺で、血液を原料にして作られます。涙の約95%が、この水分です。涙腺は、房細胞と導腺細胞を筋上皮細胞が包むような構造をした多数の小葉が重なり合っています。まるで植物の葉が密集しているかのような形状をしています。

【涙腺の細胞】
涙腺の再生医療がいち早く実現することを切に望みます。

涙腺から作られる涙の成分には、水分、電解質(Na Ca HCO3 CL)、タンパク質、ラクトフェリン、リゾチーム、分泌型ムチン、IgA、グロブリン、細胞活性因子など

涙腺は自律神経(副交感神経>交感神経)による支配を受けています。涙は一定の分泌量を保っており、これを基礎分泌と呼びます。自律神経のバランスによって涙の量、質が変化します。

涙腺に溜まった涙は、瞬きの圧迫によて排出されます。次の要素が加わることで涙液量が変化し、時に、短期間で大量の涙を生成・排出することもあります。

  • 三又神経が刺激を受けたとき(反射性分泌)
  • 精神的な刺激を受けたとき(感情性分泌)

起床時の涙液(動的状態)

涙液の分泌から排出までの一連の流れは、まぶたの動き(瞬き)によって形成されます。瞼の構造は、皆さんが日常的に使っているファスナーやジッパーと似ています。瞬きは上下の瞼が均一に密着するのではなく、耳側から鼻側へと流れるように閉じていきます。顔面神経の走行からもわかるように、眼輪筋は耳側の方が収縮力が強いからです。これは、涙を分泌する涙腺が耳側にあり、排出口である涙点・鼻涙管が鼻側にあるという解剖学的特徴とも一致います。これらは、涙液動態において合理性を有しています。

睡眠時の涙液(静的状態)

コンタクトレンズを付けたまま寝してまし目がパリパリに乾いたという経験をされた方がいるかもしれません(とても危険です)。寝ている時は、涙の分泌はゼロに近い状態になります。

寝ている間、目が開いている人はもちろん、普段から目の乾く人は、寝ている間に目が乾いてしまう場合があります。

日中は常に働いている涙腺は、休むことが必要。寝ている間に涙腺は休んでいる。

睡眠時は、覚醒活動時に比べ血液循環が緩やかになります。

呼吸も深くなり、筋緊張も緩みます。

もちろん、寝ている間は、目は閉じていますので、瞬きによる涙液分泌作用は停止します。

人体は希少な涙を効率よく利用する絶妙な解剖学的構造を有している。

涙腺は朝から晩まで、一日3cc(3ml 小さじスプーンが5ml)を分泌.

涙腺から出る涙は1日3ccにも満たない量です。唾液が1日1リトル分泌されるのと比べると、涙の分泌量は、ごくわずかです。つまり、私たちの目の健康は、わずか1日3ccの涙で保たれているのです。

もし、涙が唾液のように大量に出ていたら、泣いたときのように視界が涙で滲んでしまいます。そこで、わすかな涙で、目の表面を保護する仕組みが、涙の3層構造なのです。涙は三層構造によって、視覚を遮らない非常に少ない量で、繊細な角膜をコーティングし乾燥から防いでいるのです。

涙腺からの涙液分泌が減少する病気

シェーグレン症候群

スティーブンスジョンソン症候群

骨髄移植後慢性GVHD