眼・顎・耳の交感神経亢進症の図

眼精疲労に関連した顎関節症、顎痛、めまい耳鳴りの共通項とは

重度の眼精疲労を抱える患者さんの中には、目の症状と合わせて、顎関節症や顎関節痛などの顎(あご)の症状や、めまい・耳鳴りを主とした耳の症状を訴える患者さんが少なくありません。

私たちは、目・顎・耳に複合的に起こる症状に、何らかの関連性がないかを探る中で、一つの共通点に着目しました。

それが、交感神経亢進症という症状です。交感神経亢進症は自律神経失調症の一種で過度に交感神経が強く働いてしまい、様々な不定愁訴を生じる状態です。

◆目と交感神経
これまで述べてきた通り、目は交感神経による強い働きを受けています。遠くの物を見る時、近くの物を凝視する時、瞼を挙上し目を大きく見開く時など、交感神経の働きが活発になります。

◆顎と交感神経
歯の歯髄を包む「歯根膜」にも豊富に交感神経線維が接続しており、歯を強く噛みしめることで交感神経(闘く神経)が鼓舞されます。睡眠時に「噛みしめ」などの症状が強い場合は、副交感神経が優位となるはずが、交感神経が亢進してしまい、寝ている間も咬筋や首や肩に力が入り続けてしまう状態となります。

◆耳と交感神経
耳に関しては耳介(耳たぶ)には交感神経が接続しており、交感神経を強く作動させ、耳介に意識を集中することで「聴覚を研ぎ澄ます」ことが可能です。

交感神経は「闘う」際に、身体能力を高める作用があり、脳の覚醒や集中、また筋力などの身体能力を向上します。

一方で、常に交感神経が優位になった状態では、筋肉や骨格が緊張し続け、心拍数が上昇し血流量も増大します。その結果、エネルギー消費も膨大になります。私たちは副交感神経とのバランスを図り、身体に支障が起きないように活動を維持しています。

そのような中で、近年注目を集めているのが「交感神経亢進症(こうかんしんけいこうしんしょう)」という症状です。

◆眼交感神経亢進症

長時間のPC作業やスマホ凝視により、目の交感神経が亢進してしまう状態です。光をまぶしく感じたり、睡眠障害を来す場合もあります。遠くが良く見える視力の人や、強い度数の眼鏡やコンタクトで過ごしている方は要注意です。

◆顎交感神経亢進症

いわゆる喰いしばり症です。強いストレスに晒されると、それを跳ねのけようと、噛みしめによって歯根膜の交感神経を刺激し、無意識に交感神経を高めようとします。気が付くと歯を強く噛みしめていたり、歯ぎしりを起こしやすい人は要注意です。スポーツなどでは、喰いしばることで瞬間的な筋力が増大しますが、日常的に歯を喰いしばっていると、顎関節症や顎痛を引き起こします。

◆耳交感神経亢進症

耳介には交感神経が分布し、耳の中には副交感神経が分布しています。耳かきが気持ちよいのは耳の中の副交感神経を刺激することでリラックス出来るからです。

耳介(耳たぶ)は周囲の音を検知し、首で頭位を修正して効率よく収音するよう働きます。これは周囲の状況を音で察知する防衛機能であり交感神経の働きによって能力が増強されます。

ヘッドフォンで、音楽をガンガン聴いていたり、大音量で映画やゲームをしていると、耳の交感神経が亢進する状態が続いてしまいます。騒音や大きな音に耳介が晒され続けると交感神経が過度に亢進してしまい、耳鳴りを起こす場合があります。

また、耳の内耳に気圧の変化を感知するセンサーがあり、自律神経の働きによって制御されています。そのため交感神経亢進の状態が続くと、めまいを誘発することがあります。

刺激過多な社会の中で

現代社会において私たちは、雑踏、人混み、化学物質、電光、映像、騒音、人間関係、コロナ禍による社会不安など、実に様々なストレスに晒されています。気づかないうちに交感神経が亢進し、休んでも疲れが取れない、よく眠れないなどの自律神失調症を来すことが少なくありません。その多くが、目や耳から入る過度な刺激によって、心身に負荷が生じているのです。

生活習慣や生活環境を見直して、心身のバランスを図ることが大切です。