近年、医療TV番組などで関節リウマチが取り上げられ、一般にも良く知られるようになってきました。医療の現場では、関節リウマチの診断と治療は目覚ましい進歩を遂げています。その結果、私達鍼灸師による関節リウマチへの取り組みも大きく変わってきています。

◆検査の進歩
血液検査によるリウマチ因子や抗CCP抗体の測定により、症状のない人でもリウマチの潜在的な発症リスクの把握が可能となってきました。リウマチは遺伝的な要素もありますので、自分がリウマチになりやすい体質かどうかを知ることも重要かと思います。一方で検査数値が高値(H)であった場合、「将来リウマチを発症するかもしれない」と不安になり、それがかえってストレスになってしまうかもしれません。

以前は、リウマチと既に診断され痛みの軽減や関節の拘縮予防を目的として鍼灸を受ける患者さんが殆どでした。

しかし現在は、「もしかしたら自分はリウマチかもしれない(病院未受診)」、「病院でリウマチの検査を受けているが診断は付いていない」といった、リウマチ発症以前の患者さんが当院を受診するケースが増えています。

また、「RF値や抗CCP抗体値を下げるような鍼治療はないか?」という問い合わせも増えています。

このような状況に対して、新たな鍼灸療法を試みている治療院もあり、実際に当院でも、抗CCP抗体・高値、RF値・高値で関節に炎症所見のない、あるいは軽度の患者さん(関節リウマチ疑い)の治療を行っていく中で、異常数値の軽減や、炎症疑い所見が消失した例も経験しておます。

これらは、心身のストレスケアに重点を置いた鍼治療を行うことで異常数値の軽減が図られたと推察していますが、回帰性リウマチの一種で自然寛解したとも考えられます。

◆治療の進歩
専門病院では、関節リウマチ早期の段階から積極的な薬物療法を行うケースがあります。そのため、抗リウマチ薬や生物学的製剤を試行中の患者さんが鍼治療を希望するケースが増えています。

鍼灸治療は関節リウマチに対して古来より積極的に行われており、痛みの軽減、関節拘縮の予防などに効果を発揮してきました。

当院では、患者様の病態を把握したうえで治療を行いますので、病院の検査データがありましたらご持参、もしくはお伝えください。また、薬の使用経過なども踏まえて、患者さんに合った治療を行っています。

以下、当院で鍼灸治療を受けているUさん(30代後半女性)のエピソードです。

1か月前から、全身の関節が痛むようになり、肩こり・腰痛もひどくなってきたとのことで平成24年10月下旬に当院を受診。

関節の痛みは、右肩のズキンという突然の痛みからはじまり、翌日には左肩にも同様の痛みが発生。3日ぐらい経って、右手中指の第二関節にピッキっと痛みが生じ、すぐに左手中指にも同様の症状が出現。やがて、左右の指全部が根元の方からむくんできたとのことでした。その後、歩行時に足の裏に痛みが生じ、両足首、両肘の関節にジンジンする痛みが生じたとのことでした。

その他、微熱が続いたり、朝起き掛けにやや手がこわばるといった症状もあったそうです。

当院初診時、中指PIP関節部に腫脹が見られたため、「関節リウマチ」を疑い、医師の受診を勧めました。

以下は、病院での血液検査データです。

血沈、MMP-3、RF値、抗CCPがいずれも高値を示しており、関節リウマチが疑われる状態でした。ただし、CRPは正常値なので、MRIや超音波エコーによる画像診断を合わせて判断すると医師から言われたとのことでした。そして1ヶ月後の超音波エコー検査では、右中指PIPに僅かに滑膜炎の所見が診られたとのことでした。

その後の診察で、関節リウマチの超早期の可能性があるとの医師から説明がありましたが、滑膜炎の所見が単関節のみであること、触診所見では、他に滑膜の肥厚などが認められないことから、すぐには薬物療法はせず、1か月単位での経過観察となりました。

ここで特筆すべきは、当時のUさんには仕事と家庭の両方で非常に大きなストレスがかかっていたということです。

関節リウマチは、遺伝的な要因はあるものの、最終的には心身への過剰なストレスが発症の引き金になる場合が多いと言っても過言ではないように思います。

Uさんは、少しでも関節リウマチの発症・悪化を食い止めたいとの思いで、当院の鍼治療を受けました。

結果的に、2ヶ月後の関節エコーでは、右中指PIPの滑膜炎の所見は消失しており、MMP-3、RF値、抗CCPなどの検査でも数値が徐々に下がっていました。そして、6年経過した現在でも、経過観察のみで小康状態を保っております。

ただ、心身のストレスの状態に応じて、関節症状が再燃しそうな感じもあるとのことで、継続的に当院で鍼治療を受けております。

※関節リウマチの病態は多種多様で、発症から急速に進行してしまう場合もあれば、完寛と再燃を繰り返す場合、一過性の症状のみで自然に収まってしまう場合など様々です。

※鍼灸でも様々な効果が期待できますが、専門医による早期診断・早期治療が第一ですので、気になる症状がある方は、まずは病院を受診してください。


関節リウマチについて

関節リウマチ(RA)は,様々な関節に慢性的な炎症を起こす自己免疫疾患です。関節リウマチの病態は様々ですが、発症初期から急速に関節変形を生じる場合もあり、QOL(生活の質)維持のため早期診断・早期治療により病勢をコントロールすることが重要とされています。

関節リウマチは、関節滑膜への炎症細胞浸潤による滑膜炎が主で、本来は細菌などの外敵から身を守るはずの免疫細胞が誤作動を起こし、自己の関節組織を攻撃してしまうというものです。


◆関節症状

関節リウマチの初期段階では、指などの小関節から炎症が始まるケースが一般的です。特に、PIP関節、MP関節に症状が出やすく、逆にDIP関節には症状が出にくいことが知られています。リウマチの関節症状は両側性・多関節性が特徴です。

関節リウマチは、関節内の滑膜という組織に持続的な炎症を起こします。この滑膜は、ヒアルロン酸や栄養成分、また免疫細胞などを含む滑液を生産するという重要な役割を持っています。

関節内には血管はなく、関節軟骨は滑液から栄養を得ています。また、関節内に細菌などが侵入した場合は滑液が増え、外敵を除去してくれます。

例えば変形性関節症などで関節内に炎症が起きると、滑膜からの滑液滲出量が増え、いわゆる関節に水が溜った状態となります。

関節リウマチでも、膝や肘、股関節などの大きな関節では、持続的な滑膜の炎症による滑液の滲出により関節に水が溜るという症状になる場合があります。

滑膜炎とは
関節リウマチは、なぜ滑膜に持続的な炎症を起こすのでしょうか。これには自己免疫機構が深くかかわっています。

免疫細胞にはマクロファージ、T細胞、B細胞などがあり、様々な標的に対する攻撃ネットワークを形成しています。これらの免疫細胞はサイトカインという情報伝達物質を生産し、お互いの活性化を図っています。

関節リウマチは、自己の免疫細胞が炎症を引き起こすことで滑膜が増殖していきます。このような関節の炎症にはTNFなど様々なサイトカインが関与しています。これらのサイトカインまたは受容体を標的とした薬に、生物学的製剤(TNF阻害薬など)などがあります。

◆関節リウマチの初期症状
リウマチの初期症状で代表的なものは「朝の手のこわばり」です。朝起きて30分位の間、指が動かしずらい状態が続き、しばらくすると普通に動くようになるというものです。

その他、熱っぽい、微熱が続く、疲れやすい、貧血気味、身体の節々が痛い、などがあげられます。リウマチ初期にも目や肺など関節以外でも症状が出ることがあり、目の乾燥や充血、動悸や息切れといった症状がでる場合があります。

鍼灸院には、肩こりや膝の痛みなどで、多くの患者さんが治療を受けますが、指が腫れて指輪が入りずらくなった、両肩に五十肩のような痛みがある、ぶつけていないのに関節が腫れた、といった症状ではリウマチが疑われる場合があります。