耳の症状の中でも、良くなったり悪くなったりを繰り返す耳閉塞感、めまいを生じる患者さんは少なくありません。

月単位や週単位で、耳の閉塞感や浮遊感などのめまいが、強くなったり軽減したりを繰り返す。また、一日のうちでも午前中は比較的症状が強く、午後になると治まるなど、症状の経過や頻度は様々です。患者さんの多くは女性で、耳鼻科に行っても耳には異常がないと言われます。

原因は様々ですが、このような場合、関係性が高いと思われるのが「耳と身体の”むくみ”」です。特に女性特有の生理周期や更年期障害と関係があることが多いです。

【女性はむくみやすい】

生理前に胸が張ったり、身体がむくんだり。女性なら、容易に経験する身体の変化だと思います。これには、女性ホルモンが関係しており、妊娠に向けた生理的なメカニズムです。

黄体ホルモン(プロジェステロン)の分泌が増えると、女性は体内に水分を溜め込むよう作用します。これは、子宮内膜を厚くし、受精卵が着床しやすい、みずみずしい子宮環境を整えるためです。ホルモンは血流にのって全身に作用しますので、子宮内だけでなく、乳房や手足のむくみ等も生じさせます。むくみのため、身体がだるくなったり、頭痛が起きたりすることがありるのはこのためです。

当然、身体のむくみは、目や耳にも影響を及ぼすことがあり、内耳や三半規管がむくむと耳閉感やめまいを起こしやすくなります。

もちろん原因が一つということは少なく、環境的なストレスや過労、睡眠不足などが重なると、症状が出るというケースが多いです。また、もともと子供のころから三半規管や内耳が弱い人は、より影響を受けやすいと言えます。

身体のむくみを解消すると耳閉感やめまいがよくなる。という患者さんは実に多く、このような場合、耳に鍼を打たずに「体のむくみを取る」だけで、症状がすっかり良くなります。

ただ、ストレスの緩和や、生活習慣などの改善等が得られないと、その時はよくなっても、同様の症状を繰り返すということになってしまいます。

40代の女性の治療例

昔から時々、めまいの症状がありましたが、40代後半になってから症状が強くなり、頻度も高くなっててきました。

更年期の症状もあり、基礎には軽度の腎機能障害がある方なので、とにかく”身体のむくみ”の症状が強いのが印象的でした。

初めのうちは、めまいが起きたら当院を受診して治療を受け、一時的に症状が治まるが、また繰り返すという状態でした。

しかし、ある時、めまいの症状が生理周期と連動していることに気がつき、「耳と生理周期と身体の浮腫」という三角関係に着目することで高い治療効果を得ることができました。特に腎機能低下のため、むくみの度合が強く、耳に大きな影響を及ぼしていたのだと思います。

東洋医学では、耳の病は腎(じん)の病と言われますが、本質をついていると思います。