ある日、突然、物が二重にみえて眼球が動かしづらくなった。そのような患者さんが、当院には多く来院されます。

このような場合、眼球運動障害、眼筋麻痺などが考えられますが、まず脳の器質的な病気がないか、病院で精密検査を受ける必要があります。

それは、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの緊急を要するケースがあるからです。また、感染やヘルペスによる神経の炎症などで起こることがあり、このような場合も、第一に病院を受診するのが通常です。

タイトルに記載したフィッシャー症候群は、風や胃腸炎のあとなどに、急性の外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失を生じる病気で、主に眼球運動障害による複視を生じる病気です。尚、当院はこれまでに、類似疾患のギランバレー症候群の顔面麻痺・眼外筋麻痺の治療を含め、10名前後の患者さんの治療経験があります。

一方で、原因不明の眼筋麻痺であることも多く、この様な場合は、病院での初期治療の後は、自然に回復するのを待つ(経過観察)となることが多のが一般的です。

眼筋麻痺の回復過程は、3週間から半年、場合によっては1年以上かかる場合もあり、非常に個人差が大きいと言えます。

重症例では、神経核の脱髄や、神経線維の損傷は、時間をかけてゆっくりと修復されていきますので、私たち治療側も患者さんも、本当に数週間・数カ月単位で回復を見守っていくという、何とも根気のいる時間を過ごすことになります。

そのような中で「回復を少しでも早める」という試みを、当院では鍼治療にて行ています。

患者さんのQOL向上や仕事への復帰なども大切ですし、麻痺が完全に治らなければ眼位を調整するための手術を受けることになるケースもあります。

いかにして「早く完治へ導くか」は、やはり自然治癒力を高めるのが一番です。ここは、現代医療では手が届きにくいところでもあり、逆に鍼灸治療が得意としているアプローチなのです。

まれに、数回の治療で劇的に回復する例もありますが、基本的には数回の鍼治療では、大きな変化を感じづらいので、継続的・長期的な鍼治療が必要になります。

ただ、当院の場合、患者さんからも「鍼を受けているから回復が早まったと思う」「医師の予測よりも回復ペースがあきらに早い」などの声を聞きます。

もとろん、同じ病態で、「鍼を受けた状態」と「受けていない状態」を比較していなので、あくまで体感的な効果ということになります。