眼精疲労、ドライアイ、ピント不全、眼痛、眼瞼下垂、眼瞼痙攣、頭痛や動悸、眩暈、平衡感覚障害、睡眠障害、耳鳴り、口の渇き、首や肩の持続するこり、易疲労感、自律神経失調といった症状において、様々な治療を受けても改善しないケースがあります。一方、そのような方の中には、生活環境などの話をよく伺ってみると、意外な原因が浮かび上がってくる場合があります。

「まさか」「そんな盲点が」・・・。

それは、シックハウス症候群です。

住居という生活の根幹が、病気を誘発しているということは、非常にシビアな問題となります。しかし、シックハウスの状態が続くと、建材以外にも様々な化学物質に過敏反応を起こしてしまう化学物質過敏症に症状が移行しまします場合がありますので注意が必要です。

シックハウス症候群は、新築住宅やリノベーション物件などに入居することで起こる可能性がある、特異的な化学物質過敏反応です。原因は建物の使用される建材、接着剤、可逆剤、防腐剤、塗料、壁紙、防カビ材、防虫剤、家具などから揮発される様々な化学物質です。建築方法にもよりますが、条件が悪いと数年に渡りシックハウスの状態が持続、または悪化してしまう場合もあります。

また、住居の他にも、学校や職場、車などでもシックハウスが問題となることがあり、シックスクール、シックビルド、シックカーなどがあります。

シックハウス症候群の症状は
皮膚や粘膜(目、鼻、喉)への刺激で、目がチカチカしたり、目や口が乾いた感じがします。また、中枢神経にも影響が出る場合があり、頭痛や眩暈、耳鳴り、全身倦怠感、動悸、喘息の様な症状、自律神経失調症なお、原因不明の体調不良など、多岐にわたります。

特に当院では眼精疲労やドライアイの治療を行ているので、滑動性眼球運動障害やピント調整津障害、羞明、眼瞼下垂、眼瞼痙攣、ドライアイなどの症状をシックハウス症候群の影響と見て治療を行うことがあります。

実は、この文章の筆者である私は、重度の化学物質過敏症です。数年前に治療院のスタッフルームとして借りたマンションの一室が、ひどいシックハウスだったので、そこからシックハウス症候群の研究に取り組み始めたという経緯があります。

さて、2004年に建築基準法が改定され、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドなどが使用禁止となり、24時間換気システムの設置が義務化されたことで事態は収束されたかに思われました。しかし、現実には、シックハウス症候群は、今でも起こり続けています。

新築物件はもとより、古い建物の一室を新築同様にリフォームする、いわゆるリノベーション物件というものがあり、日本中の建物が老朽化する中で、その需要は急増している一方で、シックハウス症候群に対する注意喚起が必要です。

現在の住宅の多くは、工場で企画生産された新建材(合板や集成材)を用いており、高気密性のため化学物質が抜けにくい構造になっています。

Aさんは、リノベーション物件に入居して2カ月後から、春先なのに冬のように室内が寒いことに違和感を覚えたといいます。また、部屋の中に居ると、目や喉が非常に乾燥するので、加湿器を部屋中で使用していたが、一向に改善しないので、何かおかしという感覚があったそうです。はじめは、過労、風邪や花粉症の症状かと思い、そのままの生活を続けていました。

6カ月もすると、夜に呼吸が苦しくなり喘息のような発作を頻繁に起こすようになりました。また、目が乾燥が強いので、ドライアイの症状で数件の眼科を受診するも原因が分からず、目が異常に疲れ、常に頭痛がすうるという状態が続いていまいした。

最終的に、住居の壁に用いられていた抗菌コートのための化学物質と接着剤が原因で、目や喉の粘膜の乾燥と炎症が起きていることが判明しました。このまま住み続けていると危険だ思い、賃貸物件だったので、すぐに引っ越したことで、それらの症状は解消しました。

最後に、シックハウスとドライアイについて解説いたします。

まず、ドライアイを整理しますと、ドライアイの原因には内的要因と外的要因があります。内的要因に関しては、全身的な病気がないか、目の病気がないか、など既に様々な病院で検査を受けておられると思います。検査で異常がない場合は、自律神経失調症など、神経性・心因性によるもが疑われます。また、睡眠薬や抗うつ薬の常用でドライアイになる場合もありますので、薬の服用状態なども考慮しなければなりません。

一方で、ドライアイの原因として見落とされがちなのは、ある種の中毒症状やアレルギー症状で、その代表がシックハウス症候群です。特に、接着剤系のホルムアルデヒドやアセドアルデヒトには粘膜刺激性があり、角結膜表面に存在するムチン細胞(膜型ムチン)が障害を受けることがあいます。また、涙腺からの涙液分泌も影響を受ける場合があります。

・新築物件や、古い建物をリノベーションした物件で起こることが多い。
・新建材特有のにおいがするシックハウス物質と、ほとんど匂いが分からないシックハウス物質があり、頭痛や粘膜の刺激やドライアイを来すことが多い。
・その物質に反応するかは個人差が大きいが、長時間その室内にいる人ほど症状が出やすい。

・引っ越しからまもなくは身体に大きな異変は現れないことが多いが、2~3か月、その室内で生活していると症状が重くなってくる。通常、シックハウス物質は、換気などで軽減するが、数年間、化学物質を揮発し続ける建材もありうる。

・特定のシックハウス物質に長期間にさらされていると、体内に蓄積されている場合があるので、その場所から短期間離れただけでは症状が改善しないこともある。

尚、シックハウスが原因かどうかは、今住んでいる場が問題となるので、非常に難しい問題です。原因がシックハウスではなく、全くの検討違いでしたら、患者さんを心配させただけという、非常に申し訳ない結果になりますので、私たちも発言には慎重にならざるをえません。しかし、症状の改善に、参考になればとの思いで、この文章を書きました。もし、シックハウス症候群かもしれないという段階でお悩みの方がおりましたら、ご相談ください。当院は鍼灸院ですので、シックハウス症候群の診断は行えません。また、原因物質の調査なども行えませんので、あらかじめご了承ください。